相場の種類について
外国為替相場には、
固定相場制
と
変動相場制
という2つの種類が存在します。
建材では、世界の多くの国が変動相場制を採用していますが、投機目的での相場操作などにより市場が急変し、経済が混乱するため、変動相場制を疑問視する声も出ています。
まずは、固定相場制と変動相場制はどこが違うのかを考えてみましょう。
固定相場制とはなにか
固定相場制とは、一言でいうと
為替レートを固定して決めてしまう制度
です。
1ドル=100円というように、為替レートを決めてしまい、取引や両替をするときは常にこのレートに従います。
また、
為替レートの変動がごく小さく制限されている場合
も固定相場制と呼ばれ、取引主要国の通貨レートに自国のレートを連動固定するペッグ制などがこれに含まれます。
固定相場制が世界的ルールだった時代
1971年までは、
世界中の国が固定相場制
でした。
この時代の為替レートは、国際通貨基金が定めていた「IMF平価」によって決定されていて、変動幅もその上下1%以内に抑えられていました。
日本円も1949年より、GHQの指令に基づき1ドル=360円に固定されていました。
1968年、固定相場制を揺るがす事件が起きました。ニクソン米国大統領が、
ドルと金の交換を停止すると発表し、
固定相場制を支えていた基軸通貨であるドルの信用が大幅に低下、
固定相場の維持が困難になりました。これが
ニクソンショック
と呼ばれるものです。
これを切っ掛けとし、
経済主要国は次々と相場変動制へ移行し、
1978年にはIMF平価も廃止されたのです。
1990年代から2000年代にかけては、先進国だけではなく新興国や途上国でも
固定相場制を廃止する動きが広がりました。
現在において、完全な固定相場制を採用しているのは、サウジアラビア王国、ベネズエラ・ボリバル共和国などの一部の国のみとなっているのです。
変動相場制とはなにか
こうしてこれまで主流だった固定相場制に変わって、
市場の需要と供給によって為替レートが変わっていく変動相場制が主流
になっていきました。
変動相場制では、各国の通貨が自由に売買されるために、為替レートは刻々と変化しますので、これを指して
フロート制
とも呼ばれています。
基本的には為替レートの決定を、外国為替市場の需要と供給に任せますが、相場の急変などの場合には、各国の中央銀行が市場介入し為替レートを操作することもあります。
変動相場制の成り立ち
変動相場制は、ニクソンショックの後の1972年に英国が採用し、ほかの主要経済国もそれに追随する形になり、日本も1973年の2月に変動相場制を取り入れました。
この世界的な流れを受け、1976年、ジャマイカのキングストンで行われた
国際通貨基金の委員会で、為替相場の公式ルールとして認められたのです。
変動相場制は、導入からまだ半世紀も経ていない、新しい制度と言えるでしょう。
変動相場制と固定相場制を比べてみる
変動相場制
と
固定相場制
はそれぞれに利点と欠点が存在しています。
【変動相場制のメリット】
変動相場制は、貿易などでの不均衡状態を取り除きやすいことに利点
があります。 例えば、ある国の貿易が黒字になると、その国の通貨は人気が出て買われるようになるために、通貨価値の上昇につながります。 この結果として、その国の輸出競争力が低下するために、貿易黒字が減るのです。 こうしたメカニズムが自然と働き、
一部の国だけに黒字が集中し続けるという不均衡状態を解消してくれる
のです。
【固定相場制のメリット】
対して固定相場制では、それぞれの国の産業基盤が安定しやすくなります。
為替相場が変動してしまうと、
輸入出をする産業は大きな打撃を受ける
ことがあります。 例えば自国の通貨が周りに対して割高になると、輸出産業は大きなダメージを受けるため、経営が難しくなり、雇用の維持が困難になります。 こうしたことから、
輸出産業が主力の国や、これから輸出産業を育てていこうとしている国では、固定相場制が好まれる
こともあります。 かく言う日本も、あの高度経済成長期時代には、為替相場が固定されていたために、家電などの輸出産業が発展したという側面があるのです。
【変動相場制のデメリット】
変動相場制の最大の問題点は、
通貨そのものが投機の対象になることにあります。
特に近年では、通信ネット網とモバイル機器などの高速化、小型化などにより
投機マネーが拡大。
投資家のマネーゲームにより、為替自体がカジノ化してしまっているのです。
これにより、
輸出入の産業は大きく相場に振り回されること
になり、結果として、市井の人々の生活も不安定に陥りやすくなっています。
【固定相場制のデメリット】
固定相場制でのデメリットは、通貨に対して効果的な金融政策を行えないこと
があります。 通貨にはそれぞれに政策金利が設定されていますが、この金利に差があると
金利の高い国の通貨が買われる傾向
があります。 例えば、日本円と米ドルの為替レートが固定されているとした場合、米国が金利を下げると、金利の高い日本円に短期的な資金が流れてきます。 円の供給を維持するためには、中央銀行である日本銀行が円を売らなければなりません。 こうなると、日本政府が対策を取るまでもなく、日本円の金利が下がってしまうのです。
つまり固定相場制の下では、金利の引き上げやインフレの抑制などを行うことが困難であり、結果として
小回りの利く金融政策が滞ってしまうこと
が考えられます。
固定相場制と変動相場制の中間の相場制
固定相場制と変動相場制の中間をとろうというものが、
管理フロート制
もしくは
管理変動相場制
になります。
この相場制は、
相場を変動制にしつつ、一定の範囲内にて管理するもの
です。
管理フロート制は2005年に中国政府が導入し、人民元に採用をしています。
これを皮切りにし、ベトナムなどいろいろな国で固定相場制ならではの輸出産業の育成と、資本の自由の両立を目的として、この管理フロート制を導入し始めています。